ビジネス融資の繰り上げ返済は、多くの経営者にとって魅力的な選択肢となっています。繰り上げ返済によって、返済期間が短縮され、利息負担が軽減されるため、財務の安定化や借入金の削減が期待できるからです。
しかし、その前に注意すべきポイントを把握しておくことも重要です。この記事では、ビジネス融資の繰り上げ返済によるメリットと注意すべきポイントについて詳しく探っていきましょう。
繰上げ返済とは?
「事業融資の繰り上げ返済」とは、「繰上げ償還」とも言われ、ローンや融資の返済期間中に、元本の一部または全額を予定よりも早い時期に返済することを指します。
つまり、元本返済スケジュールを前倒しすることです。繰上げ償還を行うことで、返済期間が短縮され、総返済額が減る可能性があります。
繰上げ返済のメリット
経営者にとって、事業融資を受けることは、ビジネスの発展に欠かせないものですが、返済においては多大な負担が伴います。そのため、繰り上げ返済は、経営者にとって大きなメリットをもたらします。
金利負担の軽減
繰り上げ返済を行うことで、支払う利息が減少するため、返済総額が少なくなります。これにより、借入金返済の負担が軽減され、現在の財務状況が安定した状態を保つことができます。また、返済期間や返済額を繰り上げることで、利息負担が軽減されるため、長期的に見れば大幅なコストダウンにつながります。
キャッシュフローの改善
ビジネス融資の繰り上げ返済は、長期的なキャッシュフローの改善にも大きく寄与します。繰り上げ返済により毎月の返済額が少なくなると、事業の運転資金に余裕が生まれます。企業は資金をより柔軟に管理し、新たな投資機会に資金を再配分することが可能になるでしょう。
加えて、返済期間が短縮されることで将来の不確実性が減少し、企業の財務状況が安定します。
信用スコアの向上
ビジネス融資の繰り上げ返済は、企業の信用スコア向上にも寄与します。繰り上げ返済を行うことで、貸し手に対して責任感のある借り手であるという印象を与え、信用記録にプラスの影響をもたらすことができるでしょう。これは、将来の融資を受ける際の条件改善につながります。
信用スコアが高いと、より低い金利での融資が可能になることも多く、長期的な資金調達コストの削減に直結すると言えます。信用スコアが向上すると、新たなビジネスチャンスやパートナーシップの機会にもつながるでしょう。
繰上げ返済のデメリット
流動性のリスク
経営者が事業融資の繰り上げ返済を行うことには、デメリットも存在します。繰り上げ返済を行うと、手元の資金が減少し、事業経営に支障をきたす可能性があります。
さらに、金融機関によっては、繰り上げ返済に対する手数料が発生する場合もあります。
また、銀行との関係が切れてしまうと、新たに融資を受ける場合に再度申込をしなければなりません。しかし、審査には時間がかかる上に、前回の融資の審査に落ちる可能性があります。
このように、急に資金が必要になった場合でもすぐに借入ができなくなるため、会社の経営に悪影響を与えることになります。
従って、経営者は銀行との関係を大切にし、繰上げ返済を行う際には、関係を損なわない程度に行うことが望ましいです。
他の投資機会の損失
ビジネス融資を繰り上げ返済すると、他の投資機会の損失を引き起こす可能性もあります。資金を繰り上げ返済に充てることで、その資金を新しい事業機会や技術革新、市場拡大などに投資する機会を逸してしまうのです。
特に、成長段階にあるビジネスや市場の変動が激しい業界では、機動的な資金運用が重要です。繰り上げ返済によって手元の資金が減少すると、これらの機会を活用するための資金が不足し、競争上の優位性を失うことも考えられます。したがって、繰り上げ返済を決定する際には、現在の財務状況だけでなく、将来の成長機会とのバランスを慎重に考慮する必要があると言えるでしょう。
繰り上げ返済の方法・注意点
まずは、金融機関の担当者に相談をしましょう
まずは、借り入れている金融機関の担当者に、繰り上げ返済を希望する旨を相談・交渉します。 一括返済ではなく、部分的な返済が可能かも相談可能な場合などもあります。
その際は、返済についての説得力のある根拠を示して交渉を行いましょう。
また、相談のとき、資金繰りに関しても確認されるので、1ヶ月分の売上を確保し、問題がないことを示しておきましょう。
繰り上げ返済を申し出ると、金融機関側では他の銀行で借り換えを考えているのではないかと想像することがあります。
また、優良な取引先との関係を継続するためにも、金融機関としては、繰り上げ返済で関係が終了することは避けたいと考える場合もあります。
そのため、金利を下げるなどの方法で繰り上げ返済を留めるように交渉することがあります。それだけでなく事業主側から繰り上げ返済を提案することで、金利を下げる交渉に進むこともあります。
そのため、事業主としては、今後のことを考えて、金融機関との良好な関係を維持するために、金融機関の反応を踏まえて繰り上げ返済をするかどうかを判断することも必要です。
振込など、指示通りの手続きをする
金融機関の担当者との交渉が成功した場合、繰り上げ返済に利用する振込先が指定されるため、振り込み手続きを行い、その他にも指示通りに手続きを進めます。
繰り上げ返済をする際のポイント
契約条件の確認
繰り上げ返済を検討する際は、まず現在の融資契約の条件を徹底的に確認しましょう。ほとんどの契約書には、繰り上げ返済に関する条項が記載されていますので、追加手数料やペナルティが発生するかどうかを確認してください。
一部の融資契約では、繰り上げ返済に伴う手数料や、特定の期間内に返済を行う場合のペナルティが設定されていることがあります。こうした条件は、繰り上げ返済の総コストに大きく影響を与えるため、返済計画を立てる前に明確に理解しておきましょう。
返済スケジュールや金利の再計算方法についても確認し、繰り上げ返済が財務状況に与える影響を正確に把握することが重要です。
財務状況の評価
繰り上げ返済を検討する際には、自社の財務状況を詳細に評価することも重要です。具体的には、現在のキャッシュフロー、予測される収入、短期・長期の財務目標などを評価します。これは、繰り上げ返済によって短期的な運転資金不足に陥る可能性があるため、事業の運営に必要な運転資金が確保できるかどうかを慎重に検討する必要があるからです。
合わせて、将来の収益予測と繰り上げ返済による節約額を比較し、繰り上げ返済が長期的な財務戦略に合致しているかもチェックしましょう。この際、現在の負債状況、資産の流動性、および市場の変動に対するリスクも考慮に入れることが重要です。財務状況を正確に評価することで、繰り上げ返済が事業に与える影響を理解し、賢明な決定を下すことが可能になります。
代替投資との比較
繰り上げ返済を検討する際には、その資金を投資に使用する場合のリターンと比較することが重要です。この比較により、繰り上げ返済が最も効果的な資金の使用方法かどうかを判断できます。
例えば、繰り上げ返済によって節約される金利のコストと、同じ資金を新しい事業機会、技術革新、市場拡大などに投資した場合の予想収益を比較しましょう。もし代替投資がより高いリターンをもたらす可能性がある場合、繰り上げ返済よりもその投資を優先することが賢明かもしれません。
まとめ
繰り上げ返済をすることは、借入残高を減らすことができ、金利負担を軽減するメリットがあります。
しかし、その一方で、繰り上げ返済にはデメリットも存在します。特に、事業融資を受けている場合には、繰り上げ返済によって事業経営に影響が出る可能性があります。 そのため、繰り上げ返済を検討する際には、事業計画やキャッシュフロー予測などを確認することが大切なのです。 繰り上げ返済によって手元の資金が減り、事業経営が苦しくなることを防ぐためにも、返済期間中のキャッシュフローを十分に見込んだ上で繰り上げ返済を行う必要があります。
また、繰り上げ返済によって借入金が減少すると、今後の融資の審査に影響を与える可能性があることも忘れてはなりません。銀行は、融資を行う際に、返済能力や信用度などを審査するため、過去の融資履歴も重視します。そのため、繰り上げ返済をする場合には、将来的な融資のためにも、十分な検討が必要です。 繰り上げ返済は、借入金の返済を早めることができるため、メリットは多くあります。しかし、その際には慎重な検討が必要であり、事業計画やキャッシュフロー予測などを確認することが大切です。
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