事業計画

資金用途外での使用がもたらす潜在的なリスクと対策

事業計画

資金を目的外に使用することは、企業に様々なリスクをもたらす可能性があります。この記事では、資金の用途外使用が引き起こす潜在的なリスクについて掘り下げ、これらのリスクを最小限に抑えるための対策を提案します。

資金用途とは?

融資における「資金使途」とは、借りた資金を具体的にどのような目的で使用するのかを指します。銀行や金融機関が融資を行う際に、借り手がどのように資金を使うのかを把握することは重要です。資金使途を明確にすることで、融資のリスクを評価しやすくなります。

また、主な資金用途には設備資金と運転資金があります。設備資金は、その名の通り「機械や土地・建物などの設備」に使うための資金です。例えば、工場の新設などの場合も、この設備資金が必要となり、かなりの額と長期間の借入が必要になります。

運転資金は、簡単に言えば「日々の経営に必要な資金」のことです。設備の購入などではないため、一般的には比較的少額で短期的な借入となる場合が多いです。

設備資金を別の用途で使った場合は?

設備資金は、具体的には「事務所や工場の建物や土地、機械設備、自動車、什器備品」などが含まれます。いわゆる、比較的高額な買い物(設備)のための資金となります。では、会社が設備資金として借りたお金を本来の目的と異なる使い方をした場合はどうなるでしょうか?

例えば、銀行に「700万円の機械を購入する」と申告したにもかかわらず、実際には500万円の機械を購入し、残りの200万円を別の用途に使った場合です。

このような資金使途の違反を防ぐため、銀行は以下の方法を取っています

  • 設備購入時の請求書や領収書などで金額を確認する。
  • 設備代金の支払いに合わせて融資を行う。
  • 設備代金の振込みを受けることで、他の用途に資金を使わせない。
  • 決算書や固定資産台帳で、対象の設備が正確に記載されているか金額が適切かを確認する。

銀行は上記のような手法を用いて、設備資金の資金使途の違反を防止しようとしています。

運転資金を別の用途で使った場合は?

運転資金は、簡単に言えば「設備資金以外のお金」です。詳しく区分すると、経常運転資金、増加運転資金、季節資金、決算資金、賞与資金などが含まれます。

では、会社が運転資金として借りたお金を本来の目的と異なる使い方をした場合はどうなるでしょうか?

例えば、銀行に「売上増加により運転資金が500万円必要だ」と申告したにもかかわらず、実際には必要な運転資金は300万円で、残りの200万円を別の用途に使った場合です。
このような資金使途の違反を防ぐため、銀行は「決算書(貸借対照表)を見て、怪しい増減のある資産や負債をチェックする」といった方法を取っています。

具体的な例を挙げて説明します。

銀行が融資を行った後、会社の決算書を確認したところ、社長への「貸付金」が増加していることが分かりました。これは、借りたお金が社長の私的な用途に使われている可能性があることを意味します。また、決算書に「有価証券(株式の購入など)」の増加が見られる場合もあります。これは、運転資金で貸したお金が投資に回されている可能性があることを示唆しています。このように、銀行は融資後の決算書を確認し、貸したお金の使途を追跡しています。結果として、借りたお金を別の用途に使おうとしても、それが明るみに出てしまう可能性があるので気を付けましょう。

資金を別の用途で使用したらどうなる?

もし銀行に説明した資金使途と異なる使い方をした場合、いくつかの可能性が考えられます。

  • 契約違反となる場合: 融資契約において、資金使途に関する明確な合意がある場合、異なる使い方は契約違反になる可能性があります。銀行は契約違反を理由に、返済の要求や法的措置を取ることができます。
  • 返済条件や利率の変更: 資金使途が契約違反となった場合、銀行は返済条件や利率の変更を要求することがあります。例えば、追加の担保を要求されたり、返済スケジュールが変更されたりする可能性があります。
  • 貸し手の信用失墜: 銀行との契約に反する使い方をした場合、貸し手の信用を失うことにつながります。これは将来的な融資や信用度の低下に影響を与える可能性があります。
  • 法的な問題: 資金の不正使用や詐欺的な行為があった場合、法的な問題が発生する可能性があります。銀行は違法行為に対して法的措置を取ることができますし、必要に応じて関連当局に通報することもあります。

財務管理の重要性

適切な財務管理ができていると、資金が用途外に使用されるのを避け、財務の安定性を確保できます。そのためには収益と支出の正確な追跡、予算計画の策定、キャッシュフローの最適化などが必要です。これを通じて、企業は資金の不足や過剰な支出を防ぎ、投資の機会を適切に評価し、リスクを管理することができます。

財務管理は、企業の長期的な戦略計画とも関連しています。予算計画を立て、それを実績と定期的に比較することで、企業が目標に向かって適切に進んでいるかを評価し、必要に応じて調整を行うことができます。これにより市場の変動や予期せぬ経済的な挑戦に対する企業の柔軟性を高めます。

さらに、透明かつ責任ある財務管理は、投資家やステークホルダーからの信頼を築く上で不可欠です。正確で透明な財務報告は、企業の健全性を示し、将来の投資や資金調達の機会を増やすことに貢献します。したがって、効果的な財務管理は、企業の安定性、成長、そして成功の基盤となるのです。

内部統制の強化

内部統制とは、企業の資産の保護、財務報告の信頼性の確保、業務の効率性と有効性の向上、法令遵守の促進を目的としたプロセスや手順のことです。内部統制を強化することで、不正行為の防止、ミスの最小化、組織目標の達成が可能になります。

内部統制の強化には、明確なポリシーと手順の策定が必要です。これには、財務報告、資金管理、業務プロセスなど、企業の各部門に関わる詳細なガイドラインが含まれます。また、従業員に対する適切な研修を実施し、内部統制の重要性と具体的な手順を理解させることも重要です。

さらに、定期的な内部監査を実施し、内部統制システムの有効性を評価します。これにより、システムの弱点や改善点を特定し、必要に応じて手順を更新することができます。内部統制の強化は、組織全体のコンプライアンスと透明性を高め、長期的な企業の健全性維持と成功に寄与します。

透明性の確保

透明性の確保は、企業の信頼性と説得力を高めるために不可欠です。透明性とは、企業の活動、財務状況、意思決定プロセスが明確で、容易に理解できる状態を指します。これにより、ステークホルダー(投資家、顧客、従業員など)は、企業の運営に関する重要な情報を適切に把握し、信頼を持って関与することができます。

透明性を確保するためには、正確で包括的な財務報告が必要です。これには、収益、費用、資産、負債などの詳細な情報が含まれ、定期的に公開されることが望ましいと言えます。また、企業の戦略的決定や方針変更に関する情報も、関係者に対して迅速かつ明瞭に伝えることが重要です。

さらに、透明性を高めるためには、内部のコミュニケーションとフィードバックのプロセスを強化することも効果的です。従業員や関係者からの意見や懸念を聞き、それを経営決定に反映させることで、組織全体の透明性が向上します。

透明性の高い企業は、信頼と評判を築きやすく、危機的状況や不確実性の高い状況においてもステークホルダーからの支持を得やすいです。

リスク対策

リスク対策は、企業が直面する潜在的な脅威に対処し、ビジネスの安定性と持続可能性を保つために重要です。まず、市場の変動、財務リスク、法的リスク、運営リスクなど、企業が直面する可能性のあるリスクを特定します。次に、これらのリスクがビジネスに与える影響の大きさと発生確率を評価し、優先順位を決定します。

リスク対策の戦略には、リスクを避ける、転嫁する、受け入れる、または軽減するといったアプローチがあります。例えば、保険の購入によるリスクの転嫁、内部統制の強化によるリスクの軽減、あるいは特定の高リスク事業からの撤退によるリスクの回避などが考えられます。

リスク対策は、定期的な評価と更新が必要です。市場や業界の変化、新たな法規制、技術の進展などにより、リスクの性質や影響が変わる可能性があるため、対策もそれに応じて調整する必要があります。効果的なリスク対策により、企業は不確実性を管理し、長期的な成功を目指すことができます。

さいごに

融資を受けた際、資金の用途と異なる使い方をすることは重大なリスクを伴います。

例えば、設備資金として借りたお金を別の目的に使ったり、運転資金として申告したにもかかわらず別の投資に充てたりする行為は、信用失墜や法的な問題につながる可能性があります。銀行は、資金の使途を厳密に管理するために様々な手段を講じています。貸付金額の確認や決算書のチェックなど、独自の監査手続きによって資金使途の違反を防止しようとしています。

融資を受ける際には、正確な情報提供と誠実な借り手の姿勢が求められます。借りた資金を予定通りの用途に使うことで信頼を築き、健全な事業運営を目指すことが重要です。

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