「追加融資」とは、既に事業のために一度融資を受けた事業者が再度融資を求めることを指します。多くの事業者は、追加融資の過程で「赤字の場合でも追加融資は可能なのか」「先行する融資の返済途中であっても再度の融資は受けられるのか」といった疑問や不安を抱えています。
この記事では、追加融資に関しての日本政策金融公庫の条件、審査の重要ポイント、そして融資を受ける際の必要書類について詳しく解説いたします。
日本政策金融公庫での追加融資を受けられる4つの条件
融資を1/2以上(最低でも1/3以上)返済していること
「返済期間」とは、融資を受けた時点から、その金額を全額返済するまでの時間を指します。
多くの方が日本政策金融公庫の創業融資を利用する際、返済期間を5~7年の範囲で選択します。この期間内に、さらに追加の融資を必要とする場合、既に進行中の返済と並行して新たな融資を受ける形になります。例として、最初の融資で500万円を7年の返済計画で受けたケースを考えると、以下のような状況が考えられます。
利息を除外して考えると、初めに500万円の借入がある状態からスタートしますが、計画通りに返済を進めれば、時間とともにその残債は順調に減少していきます。
追加融資を考慮する場合、既存の融資金額の約1/2または1/3を返済済みの状態での申込みが、融資の承認確率を高めるポイントとなります。具体的には、初回の500万円の融資の場合、250万円か170万円を返済した段階で、追加融資の申込みが推奨されます。
一度目で受けた融資額で不足している理由が改善されていること
初回の融資で希望した金額の全てを受けられなかった方も少なくないでしょう。例えば、「1,000万円を希望していたのに、審査の結果700万円に減らされた」といった状況は珍しくありません。
そのような場合、最初の審査で減額された理由を次の追加融資の審査で改善していれば、追加融資の申請が通りやすくなります。
経営が崩壊の危機にあるわけではなく、生計を支えるための追加融資を求めているわけではないこと
事業経営は容易ではなく、融資を受けながらも利益を上げることができる者と、そうでない者がいます。初めての事業に情熱を持って挑戦する事業者でも、開業から1~2年の間に連続して赤字が出て、経営を続ける意欲を失ってしまうことがあります。
ただ、現在の経営状況を金融機関に露呈させると、追加融資の審査で不利になることが考えられます。追加融資を考慮する場合、以下のアクションは避けるべきです。
- – 避けるべき行動: カードローンから50万円以上を借りる
- – 理由: 金融機関から見ると、他の借入先への借り換えを希望していると解釈される可能性がある。
- – 避けるべき行動: クレジットカードの支払いが遅れる
- – 理由: 生活資金に困っており、追加融資を求める可能性が高いと解釈される。
- – 避けるべき行動: 以前の融資返済が遅れる、または返済計画の変更を申し出る
- – 理由: 先行する融資の返済に問題がある場合、新たな融資審査は難しくなる。
前回の融資から少なくとも6ヶ月が経ち、過去半年の決算書や資金繰り表が良好な状態を示していること。
あなたの事業が好調で、新店舗のオープンや新規雇用のために追加融資を検討している方もいらっしゃるでしょう。
しかし、一度目の融資を受けてまだ2~3ヶ月しか経過していないのであれば、追加融資の申し込みはもう少し待った方が無難です。
なぜなら、一度目の融資の際、事業計画書や創業計画書をもとに融資審査を受けているはずです。計画には今後半年、1年先の利益計画なども記入しています。
それなのに、2~3ヶ月後にすぐ追加融資が必要ということは、事業主の計画性のなさを露呈してしまう結果となるため、なかなか審査には通りません。
しかしながら、「ショッピングセンターから有利な条件で新店舗オープンの誘いを受けている」などのプラス要素がある場合は、その証拠書類を見せれば融資の審査では高評価となります。
追加融資が難しい場合の解決方法
追加融資が難しい場合、その背景にはさまざまな要因が考えられます。追加融資を受けるための障壁を取り除くため、以下の解決方法やアプローチを考慮することができます。
事業計画の見直し
– 既存のビジネスプランや事業計画を見直し、収益性を向上させる方法や経費削減のアプローチを明確にする。
– 明確な改善計画を持つことで、金融機関に対する信頼を再構築する。
資金繰りの最適化:
– 未回収の売掛金を回収する、在庫を最適化するなど、資金繰りを改善する。
他の金融機関を検討する:
– 一つの金融機関だけでなく、他の金融機関や信用金庫、信用組合などとの取引を検討する。
プライベートエクイティやベンチャーキャピタルの活用:
– 融資以外の資金調達方法として、投資家からの資金提供を検討する。
クラウドファンディング:
– 事業やプロジェクトの資金調達のために、クラウドファンディングを利用する。
担保や保証人の提供:
– 追加融資を受けるための担保や、信頼性のある保証人を提供することで、金融機関の信用を得る。
経営者の自己資金の投入:
– 経営者が自己資金を事業に投じることで、金融機関からの信頼を高める。
ビジネスコンサルタントや専門家のアドバイス:
– 経営の専門家やビジネスコンサルタントに相談し、事業計画のブラッシュアップや融資のアプローチ方法についてのアドバイスを受ける。
日本政策金融公庫の役割
日本政策金融公庫は、日本国内の中小企業や個人事業主、農林水産業者などを対象に、事業資金の融資や経営支援を行う政府系金融機関です。特に、民間金融機関からの資金調達が困難な事業者に対して、低利での長期融資を提供することで、事業の立ち上げや拡大、経営の安定化を支援しています。
また、災害復旧支援や新型コロナウイルス感染症の影響を受ける事業者への特別融資など、社会的・経済的な状況に応じた柔軟な融資プログラムを展開しています。
日本政策金融公庫の存在は、国内経済の健全な発展を促し、特に中小企業や地域経済の活性化に貢献していると言えます。このように、日本政策金融公庫は、経済全体の安定と成長を支える重要な役割を担っています。
追加融資を検討すべきケース
追加融資を検討すべきケースは、事業運営において特定の状況やニーズが生じた時に限られます。主に、以下のようなシナリオが考えられます。
- 事業拡大: 事業が順調に成長しており、新たな市場への進出や生産能力の増強、追加の人材採用など、さらなる拡大を目指す場合に追加資金が必要になります。
- 設備投資: 最新技術の導入や老朽化した設備の更新が必要になった場合、これらの投資によって生産効率の向上やコスト削減が見込めるため、追加融資を検討します。
- 商品開発: 新商品やサービスの開発には研究開発費用がかかります。市場競争力を保つためには、革新的な商品開発が不可欠であり、そのための資金調達が求められるケースがあります。
- 在庫購入: 季節性のビジネスや大口の受注に対応するためには、大量の在庫を確保する必要があります。追加融資によって、これらの機会を最大限に活用することができます。
- 資金繰りの改善: 短期的な資金繰りの悪化を解消するために、追加融資を利用することも一つの手段です。ただし、この場合は根本的な経営改善策と併せて検討する必要があります。
- 災害復旧: 自然災害などによる事業の被害を受けた場合、迅速な復旧や再開には相応の資金が必要です。追加融資は、事業の持続性を確保するために重要な選択肢となります。
これらのケースでは、追加融資が事業の成長機会を捉えるため、または経営上の課題を克服するための有効な手段となり得ます。重要なのは、追加融資によって得られる資金を、事業の持続的な成長や安定につながる形で活用することです。
よくある失敗例と対策
日本政策金融公庫からの追加融資を申請する際には、成功に導くための適切な準備が必要です。しかし、申請者が陥りがちな失敗例がいくつか存在し、これらを避けるための対策を講じることが重要です。
不十分な事業計画の提出
失敗例: 事業計画が曖昧で、将来の収益見込みや市場分析が不明確な場合、融資の審査を通過することが難しくなります。
対策: 事業計画を詳細に作成し、市場分析、競合分析、財務予測を含めること。また、追加融資によってどのように事業が成長するかを明確に示すことが重要です。
財務状況の不透明性
失敗例: 現在の財務状況や過去の融資の返済状況が不透明であると、信用度が低いと判断される可能性があります。
対策: 財務諸表を最新の状態に保ち、必要な書類を整理して提出する。過去の融資に関する返済履歴を明確にし、財務健全性をアピールする。
返済計画の現実性がない
失敗例: 返済計画が現実的でない、または収益見込みに基づかない楽観的な計画は、審査で不利になります。
対策: 収益見込みを慎重に計算し、返済能力を超えない範囲で返済計画を立てる。可能であれば、返済計画に余裕を持たせることで、不測の事態に対応できるようにする。
審査期間中の情報変更や不備
失敗例: 申請後に事業計画や財務状況に変更があった場合、それを適切に報告しないと信用問題につながります。
対策: 申請書類に不備がないか事前に確認し、申請後も事業状況
まとめ
一度目の融資の返済が3分の1以上完了している場合、加えて事業の業績が安定している証拠があれば、追加融資を受けやすくなります。
追加融資を申し込む際には、創業融資とは違い、事業実績が特に注目されます。そのため、決算書や売上明細書など、売上を証明する書類の提出が求められます。
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