プロパー融資とは
プロパー融資の定義と基本的な概要
プロパー融資は、企業や個人が金融機関から直接融資を受ける形式の一つです。この融資形態は、保証協会などの第三者機関の保証を必要とせず、金融機関と借り手との間で直接契約が結ばれます。プロパー融資は主に、信用度が高く財務状況が健全な企業や個人に対して行われます。融資の決定にあたっては、借り手の信用情報や業績、資金の使途などが厳しく審査されます。
通常の融資との違い
プロパー融資と通常の融資(特に信用保証付き融資)との主な違いは、融資の保証の有無にあります。信用保証付き融資では、公的機関である信用保証協会が融資に保証を付けることで、金融機関は貸倒れリスクを軽減できます。これに対して、プロパー融資では、金融機関が直接リスクを負うため、より厳格な審査が行われます。その結果、プロパー融資は、信用保証付き融資に比べて金利が低く設定される傾向にありますが、審査を通過するのが難しいという特徴があります。
また、プロパー融資では保証料が不要であるため、借り手にとってはコスト削減のメリットもあります。プロパー融資は、財務状況が良好で信用度の高い企業や個人にとって有利な融資オプションと言えます。一方で、信用保証付き融資は、新規事業や中小企業など、信用情報が十分でない借り手でも資金調達が可能になる点で利点があります。どちらの融資形態を選択するかは、借り手の状況やニーズによって異なります。
プロパー融資のメリット
プロパー融資は、金融機関から直接融資を受ける形態法であり、特に実績のある企業にとっては様々なメリットがある融資制度です。以下、プロパー融資を受けるメリットをご紹介いたします。
低金利である点
プロパー融資の最大のメリットの一つは、その低金利にあります。信用保証協会の保証を伴わないため、保証料も不要です。審査が厳格であり、しっかりと精査した企業にしか融資ができないため、低い金利を実現することが可能になっています。企業はこの低金利を利用して、必要な資金をより少ないコストで調達することができます。
融資限度額の柔軟性
プロパー融資は、制度上の融資限度額が設定されていないため、非常に柔軟性があります。企業のニーズやプロジェクトの規模に応じて、大きな金額の融資を受けることが可能となります。厳格な審査を通過する必要がありますが、返済が滞る可能性が低く、合理的な事業計画があれば、実質的に融資の上限はありません。
企業信用度の向上
プロパー融資を受けることは、企業の信用度を向上させる効果があります。これは、金融機関から直接融資を受けられるということが、その企業の信用力の高さを示す証となるからです。プロパー融資が受けられる企業は、一般的に良好な業績や健全な財務状況を持っていると見なされ、これが他の金融機関やビジネスパートナーからの信頼につながります。
プロパー融資は、これらのメリットを活かして、企業の資金調達戦略や経営計画に大きな影響を与えることができます。低金利で柔軟な融資を受けることにより、資金効率を高め、企業の成長や発展を支える強力なツールとなります。
審査日数が短さ
信用保証付き融資の場合は、金融機関だけでなく信用保証協会も審査を行うため、概ね1ケ月~1ケ月半程度の審査期間が必要となります。一方で、プロパー融資は審査に要する期間が短く、通常は無担保の場合で2~3週間、担保があれば1ケ月程度で審査が完了します。すでに取引のある優良企業は1~2週間で審査が終わる場合もあります。
プロパー融資のデメリット
審査の厳しさ
プロパー融資最大のデメリットとして、審査の厳しさが挙げられます。前述のとおり、プロパー融資の場合は金融機関が貸倒れリスクを負うため、借り手企業の返済能力、すなわち経営状態や事業計画、また返済計画などを厳密に審査する必要があります。このため、経営状態が不安定な中小企業や、創業間もない実績の乏しい企業などは審査を通過するのが厳しい面があります。
返済期間の短さ
貸倒れリスクを避けるため、返済期間も短く設定されます。返済期間を長期に設定した場合、返済期間中に何らかの事情で借り手企業の経営状態が悪化する懸念があるためです。
これに対し、信用保証協会の保証付き融資は比較的長期の借り入れが可能となります。
プロパー融資の審査基準
プロパー融資は、金融機関が直接行う融資であり、信用保証協会を通さないため、金融機関が全てのリスクを負担します。そのため、審査は非常に厳格に行われます。
審査の厳格さとその理由
プロパー融資の審査は、貸倒れリスクを直接金融機関が負うため、特に厳格に行われます。そのため、信用度の高い企業や安定した財務状況の個人は審査を通過しやすく、逆に返済が滞る兆候がある企業などは、審査が通りにくい融資制度です。これは金融機関が不良債権を最小限に抑えるためです。
必要な資料や情報
審査過程では、事業計画書、財務諸表(損益計算書や貸借対照表だけではなくキャッシュ・フロー計算書、株主資本等変動計算書など)、税務申告書、資金用途の詳細、月次試算表や資金繰り表など、企業の健全性や将来性を示す資料が必要になります。また、個人の場合は収入証明や資産状況を示す書類が求められることがあります。
細目については各金融機関によって異なるため、担当者にご確認ください。
プロパー融資を受けるための条件
資金使途の明確化
プロパー融資を受ける前提条件として、融資を受ける目的を明確にすることが求められます。これは企業の業績以上に重要なことです。なぜならば、事前に聞いていた資金使途と異なる使い方をされてしまっては金融機関にとっては審査の意味がなくなってしまうためです。そのため、資金使途を明確にし、虚偽の無い報告をすることが必要となります。財務状況の改善と信頼関係の構築は、プロパー融資の成功において最も重要な要素となります。
業績や財務の健全性
良好な業績と安定した財務状況は、金融機関にとって最も重要な判断基準です。返済が滞る可能性が低いと判断されるためには財務諸表に偽りが無く、過去数年間の業績が安定していること、負債が過剰でないことが求められます。金融機関は、企業の財務諸表を詳細に分析し、財務状況の安定性を評価します。特に、自己資本比率が高く、流動比率が健全であることが重視されます。
保証人や担保の必要性
一部のプロパー融資では、融資の安全を確保するために保証人や担保が求められる場合があります。必ずしも全ての融資で保証人や担保が必要というわけではありませんが条件を満たしていると審査に有利に働くことがあります。昨今では担保保証に頼らない、いわゆる事業性評価融資が利用されています。企業が営む本業に優位性があり、返済が滞る可能性が低い場合や、地域の発展成長に寄与する企業などは保証人や担保が無くとも融資が受けられる可能性が高まっています。
事業計画の具体性
保証人や担保が無く、事業によってのみ投資の回収可能性を評価してもらうためには、実現可能性の高い具体的な事業計画が必要です。その上で、企業が提出する事業計画は、将来の成長性や収益性を具体的に示すものでなければなりません。借入金額や、会社の状況によっても異なりますが、事業計画書には市場分析や収益予測が詳細に記載されていることが必要です。特に調達額が大きい場合や、企業が再建ステージなどにあるときなどは公認会計士や中小企業診断士などの外部専門家の力を借りて計画策定を行うことを求められる場合もあります。
プロパー融資の審査を通過するには、これらの基準を満たすだけでなく、金融機関との良好な関係を築くことも重要です。適切な資料の提出、明確な資金計画の提示、そして過去の信用取引の実績が、審査通過の鍵となります。
プロパー融資の効果的な利用法
事業拡大の資金調達
プロパー融資は審査の厳格さによる信頼関係を前提としているため、企業の安定した経営基盤のもと、事業拡大や新規事業立ち上げに必要な資金を調達することが可能となります。
設備投資
プロパー融資には低金利というメリットがあるため、最新技術の導入や生産設備の更新に必要となる設備資金として活用することより、生産性の向上を図ることができます。
運転資金の確保
プロパー融資により、企業の日々の運営に必要な資金を安定的に確保することができます。返済期間については長期の借入が困難な際には短期継続融資を相談してみることも有効です。
その他の条件
融資を受けるためには、担保や保証人の提供が求められる場合もあります。また、金融機関によっては特定の業種に融資を行わないポリシーを持つ場合もあるため、事前に確認を行うことも必要です。
成功事例と失敗事例
成功事例の紹介とその要因
プロパー融資を受けるためには、日ごろから金融機関との良好な関係性を築いておくことが重要です。業績が悪い時だけでは無く、比較的、事業が順調な時から定期的に訪問し、業績報告を行うことは、支援が必要になった時に有効な手段です。顧問税理士の監査を受けて毎月試算表を作成している企業は、金融機関が忙しい月末、月初などのタイミングを避けて月に1度支店長を訪問し業績報告を行っています。このような企業は支援を受けやすい傾向にあります。長期にわたる取引履歴や、正確な返済実績が審査に有利に働くだけではなく、定期的な情報提供や透明性のあるコミュニケーションが信頼関係の醸成につながります。
また、プロパー融資は、金融機関との取引実績によって判断される側面もあるため、起業して間もない、実績が乏しい企業の場合は、最初からプロパー融資を申し込んでも審査に通りにくくなっています。まずは信用保証協会による保証付きの融資を受け、しっかりと返済をしていくことによって返済実績を積むことが有効です。プロパー融資は融資限度額の柔軟性があり、低金利であることから多額の投資を必要とする設備投資を行った企業や、審査期間が短いメリットを活かして、仕入れ資金として活用するケースなどが成功事例としてあげられます。
失敗事例とその教訓
一方で、プロパー融資における失敗事例として、金利交渉に焦点を当てすぎて失敗した企業があります。この企業は、低金利での融資を受けることに固執し、金融機関との良好な関係を構築することを怠りました。結果として、融資の申請が拒否される事態に至っています。この失敗から学べる教訓は、融資条件の交渉に固執することなく、金融機関との信頼関係を築くことの重要性です。プロパー融資を受けることは、企業にとって大きなメリットをもたらしますが、それには相応の準備と努力が必要です。金融機関との信頼関係を築くこと、そして企業の信用度を高めることが、プロパー融資を成功させる鍵となります。
さいごに
今回はプロパー融資について解説いたしました。起業して間もない企業は信用力が低く、最初からプロパー融資を獲得することのハードルは低くありません。また、信頼関係の醸成には、相応の努力も必要です。しかしながら、それ以上に多くのメリットがあるのがプロパー融資です。この記事で紹介した内容をご理解いただき、ぜひともプロパー融資を活用してビジネスを展開されることを期待いたします。
創業を考えている個人事業主や事業成長を目指す経営者の方は、融資コンサルティングを行う「バリューソル株式会社」をご利用ください。メガバンクで培った融資ノウハウをもとに、事業計画書の作成や金融機関への交渉をサポートします。LINEやメール、電話、ビデオチャットにて無料相談を受け付けていますので、事業計画書の書き方でお悩みの方はお気軽にご相談ください。