多くの中小企業や個人事業主にとって、事業拡大や資金繰りのために融資を受けることは、事業の発展に欠かせない重要な手段です。
しかし、金融機関からの融資の際に「個人保証」が求められることが多くあります。これは法人が借りた資金に対して、経営者自身が責任を持つという制度であり、法人だけでなく個人の財産にまで影響を与えるものです。
特に、日本の中小企業においては、融資の多くが個人保証を伴うため、経営者が負担するリスクは少なくありません。この記事では、個人保証が必要な背景、メリットやデメリット、リスク軽減の方法、さらには個人保証が不要な融資制度についても詳しく解説します。個人保証のリスクと向き合いながら、適切な融資制度を選ぶための知識を得て、事業の成長を目指しましょう。
個人保証とは何か
個人保証とは、法人としての融資に対して、経営者個人が連帯して保証を行う制度です。法人は独立した法的人格を持つため、通常、法人の負債は法人自身が返済責任を負いますが、個人保証が付けられることで経営者も返済に責任を持つことになります。
個人保証の基本的な役割は、金融機関にとって融資の返済リスクを減らすための手段です。
法人が返済できなくなった場合に備え、経営者の個人財産で返済を行うことができるため、融資の回収見込みが高まります。これにより、金融機関は中小企業や創業間もない事業者にも融資を提供しやすくなるのです。
では、個人保証が求められるケースはどのような場合なのでしょうか。
一般的に、融資額が大きい場合や、会社の信用力が不足している場合に個人保証が求められることが多いです。特に、創業したばかりの企業や収益の実績が不安定な企業は、金融機関からの信頼度がまだ十分ではないため、経営者が個人でリスクを負う形で個人保証を付けることが一般的です。
なぜ融資に個人保証が必要なのか
個人保証が求められる背景には、金融機関が負担するリスクを軽減し、融資の回収確率を上げるため以下のような意図が存在します。
経営者の責任意識を高めるため
個人保証を付けることで、経営者は自身の財産がリスクにさらされることになります。これにより、経営者はより一層、事業の成功に向けて慎重な経営判断をするようになります。経営者個人の財産を危険にさらすことで、事業の存続やリスク管理への責任感が強まるため、無計画な投資や無謀な拡大戦略を防ぐ効果もあります。
回収リスクを軽減するため
法人の倒産や経営破綻によって金融機関が融資を回収できなくなるリスクを避けるため、個人保証が用いられます。法人のみが返済責任を負う場合、倒産により法人が持つ資産が清算されると、その後の返済が期待できなくなりますが、個人保証があれば、経営者個人の財産を差し押さえることで、金融機関は一定の返済を確保できます。
中小企業の信用力の不足を補うため
新規事業や中小企業は、信用力がまだ不十分なケースが多く、金融機関にとってリスクが高いと見なされがちです。個人保証を付けることで、この信用力の不足を補い、金融機関の融資承認を得やすくする効果が生まれます。個人保証があることで金融機関も安心して融資を実行でき、企業側も資金調達がスムーズに進むメリットがあります。
このように、金融機関は事業の成功を約束できない中で融資を行うため、個人保証を通じて経営者にも責任を持たせることで、安定した返済を確保しようとしています。
個人保証のメリットとデメリット
個人保証には、経営者にとってメリットとデメリットがそれぞれ存在します。個人保証を付けることによるプラス面とマイナス面を理解し、融資を検討することが重要です。
個人保証のメリット
個人保証のメリットは、主に金融機関からの融資承認が得やすくなる点にあります。特に中小企業への融資や創業資金の融資の際、個人保証は金融機関に信頼を与えるための重要な要素となります。事業の実績が少ない場合や創業間もない事業にとって、個人保証を通じて融資審査に通りやすくなります。
さらに、個人保証を付けることで融資条件が緩和されることもあります。金融機関にとってリスクが軽減されるため、金利の引き下げや返済期間の延長、さらには融資額の増額といった有利な条件が適用されることがあります。これにより、事業者は資金調達をより有利な条件で行うことができ、事業の発展に繋げることができます。
個人保証のデメリット
個人保証のデメリットは、経営者個人の資産リスクと心理的なストレスにあります。まず、個人保証を付けることで、経営者個人の資産がリスクにさらされる可能性が高まります。事業が失敗して返済が困難になった場合には、住宅や貯金などの個人財産が差し押さえられる可能性があり、経営者の個人生活にも大きな影響を及ぼすリスクが生じます。
さらに、個人保証を付けることで、経営者は常に「失敗できない」という心理的なプレッシャーを感じることが多くなります。このプレッシャーは慎重な経営を促す一方で、過度なストレスを引き起こし、冷静な経営判断を難しくする場合もあります。経営者はこのプレッシャーを管理し、適切に対処することが求められます。
このように、個人保証は経営者個人の資産をリスクにさらすだけでなく、心理的なストレスを増加させるデメリットがあります。事業を進める上で、これらのリスクを十分に理解し、適切な対策を講じることが重要なのです。
個人保証に関するリスクを軽減する方法
個人保証を付ける場合には、事業者側でリスクを軽減するための対策を講じておくことが重要です。ここでは、個人保証によるリスクを最小限に抑えるための具体的な方法について説明します。
信用保証協会の保証制度を活用する
信用保証協会は、中小企業や個人事業主が融資を受けやすくするための保証を提供しています。この制度を利用することで、個人保証の負担を軽減し、金融機関の信頼を得やすくなります。信用保証協会が保証を提供するため、経営者個人がすべてのリスクを背負う必要がなくなり、万が一返済が難しい場合でも、金融機関に対する返済が一部保証されます。
第三者の共同保証を検討する
家族やパートナーがいる場合、第三者の共同保証を検討することで、リスクを分散させることが可能です。共同保証は経営者一人が全ての責任を負うのではなく、複数人で保証を分担する方法です。
ただし、共同保証を依頼する場合は、保証人としっかり話し合い、リスクを理解してもらった上で合意を得ることが重要です。
経営の安定性を高めて保証解除を目指す
企業の信用力や財務状況が改善されることで、金融機関に個人保証を解除してもらえる可能性もあります。信用力を向上させるためには、売上を安定させ、収益を増加させる努力が必要です。
これによって、個人保証が不要な状態へと近づくことができ、将来的には個人保証からの解放が可能になります。金融機関にとってリスクの低い企業と見なされることを目指しましょう。
保険加入でリスクに備える
万が一に備え、経営者向けの生命保険や事業保険に加入することで、リスクを軽減する方法もあります。例えば、事業が大きな損害を被った際には保険から保険金が支払われ、融資の返済に充てることができます。事業継続のためのリスクマネジメントとして、保険の活用も検討すると良いでしょう。
個人保証が不要な融資の種類
個人保証を避けたい場合、個人保証を必要としない融資制度を活用することも一つの方法です。個人保証がなくても利用可能な融資制度を選ぶことで、経営者の個人財産への影響を避けながら資金調達を行うことができます。
日本政策金融公庫の無担保融資
日本政策金融公庫では、中小企業や個人事業主向けの無担保融資制度を提供しています。特に創業支援のための融資制度は、個人保証や担保が不要な場合があり、金利も低いため経営者にとって有利です。創業当初や新規事業の立ち上げ時には、まずこの制度を検討すると良いでしょう。
地方自治体の融資・助成金
地方自治体によっては、地域の中小企業や個人事業主に対して個人保証なしで利用できる融資や助成金制度を提供している場合があります。たとえば、地域振興や産業育成を目的とした補助金や助成金を活用することで、保証なしでの資金調達が可能です。各自治体の商工会やウェブサイトで、対象となる制度について調べてみると良いでしょう。
クラウドファンディングによる資金調達
クラウドファンディングを活用することで、個人保証なしで資金を集めることができます。クラウドファンディングは、インターネットを通じて不特定多数の人から資金を募る仕組みで、特に新しいアイデアやプロジェクトに共感した支援者からの出資が期待できます。商品やサービスのプレゼンテーションが効果的であれば、個人保証のリスクを負わずに資金調達を行える魅力的な手段です。
フィンテック企業のオンライン融資
フィンテック企業が提供するオンライン融資は、短期間での審査と即時融資が可能で、個人保証が不要な場合が多いです。特に、事業のキャッシュフローや成長性が評価される仕組みがあり、事業に将来性があると判断されれば、個人保証なしでの融資が受けられる可能性があります。オンライン融資は資金調達のスピードが求められる場面で有効な手段です。
まとめ
個人保証は、事業融資において金融機関がリスクを軽減するために求められることが多く、経営者には一定の負担とリスクが伴います。しかし、信用保証協会の制度を活用したり、会社の信用力を向上させて個人保証の解除を目指すなどの工夫をすることで、リスクを軽減することが可能です。
また、日本政策金融公庫や自治体の助成金制度、クラウドファンディングやオンライン融資といった、個人保証を必要としない資金調達手段を活用することで、事業の成長に必要な資金を確保しつつ、個人の財産リスクを抑えることができます。事業の発展を支えるために、自社の状況や将来の計画に合った融資方法を選び、リスクを最小限に抑えた資金調達を行いましょう。
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