事業を行っていると融資を検討するタイミングが生まれることがあるでしょう。
当記事では、どのようなタイミングで融資が必要となるのか、どのような種類の融資があるのか、ご説明していきます。
事業融資が重要な理由
事業融資が重要である理由を、以下の三つのトピックに基づいて説明します。
事業のスピードを速めることができる
事業融資により、企業は必要な資本を迅速に得ることができます。これにより、事業拡大や市場参入のタイミングを最適化し、競争上の優位性を確保することが可能になります。例えば、新しい製品の開発や市場調査、広告キャンペーンなどに迅速に投資することで、市場の変化に素早く対応し、成長の機会を最大限に活用できます。
売り上げが現金化されるまで対応
多くのビジネスでは、売上が発生してから実際に現金化されるまでのタイムラグが発生します。事業融資を利用することで、この間の資金繰りをスムーズに行うことができます。これにより、企業は売上債権の現金化を待つ間も、運転資金を確保し、日常の運営を継続することが可能になります。
事業のリスクなど万が一に備えるため
どんなビジネスにも予期せぬリスクや緊急事態が発生する可能性があります。事業融資を活用することで、これらのリスクに対応するための資金を確保できます。例えば、市場の変動、設備の故障、または自然災害などに対応するための資金を準備することが可能です。これにより、企業は不測の事態にも柔軟に対応し、ビジネスの継続性を保つことができます。
事業融資の本質的な意義と影響
事業融資の本質的な意義と影響について説明します。
〈事業融資の本質的な意義〉
- 資金調達の手段:事業融資は、企業が成長し、事業を拡大するために必要な資金を調達する主要な方法の一つです。これにより、自己資金や内部留保だけでは実現困難な投資や事業展開が可能になります。
- キャッシュフローの最適化:企業は、資金繰りを改善し、安定したキャッシュフローを維持するために事業融資を利用します。これにより、資金の不足がビジネスの運営を妨げることなく、持続的な成長が実現できます。
- リスクマネジメント:事業融資は、予期せぬ市場の変動や緊急事態への対応策としても機能します。リスクの分散や緊急事態への備えとして、資金を確保することは、ビジネスの安定性と持続性に直結します。
そして、事業融資を受けることによる影響は次のような点です。
- 経済成長の促進:事業融資は、新しい事業機会の創出や雇用の拡大、技術革新などを通じて経済成長を促進します。企業が新しい市場に進出したり、新製品を開発したりするための資金源として機能します。
- 競争力の向上:企業は、事業融資を活用して技術革新や市場展開を行うことで、競争力を高めることができます。これにより、より効率的な運営や市場での優位性を確立できます。
- 金融システムとの相互作用:事業融資は、銀行や金融機関と企業間の相互依存関係を生み出します。企業の健全な成長は金融機関にとっても好ましい結果をもたらし、健全な金融システムの維持に寄与します。
- 市場のダイナミズム:事業融資を通じて、市場には新しいアイデアやビジネスモデルが導入され、市場のダイナミズムが促進されます。これは、経済全体の革新と成長を刺激する要因となります。
総じて、事業融資は企業の成長と経済活動の活性化に不可欠な役割を果たし、その影響は個々の企業の枠を超えて広がります。企業と金融機関、そして経済全体の相互関係において重要な位置を占めるのです。
事業融資を受けるタイミング
事業融資を受けるタイミングは、企業の状況や目標によって異なります。今回は、一般的な事業融資を受けるタイミングのいくつかをご紹介します。
・創業資金:新しい事業を始める際に、初期の資金調達が必要な場合があります。これは、製品やサービスの開発、マーケティング活動、オフィススペースの借り入れなど、スタートアップの基本的な経費をカバーするためです。
・拡大・成長資金:事業の拡大や成長を目指す場合、追加の資金が必要になることがあります。これは、新しい市場への進出、生産能力の拡充、人材の採用など、成長に必要な投資を行うために事業融資を活用することがあります。
・経営資金の補填:企業が一時的な現金不足に直面した場合、売掛金や在庫の回収までの期間をカバーするために、短期的な資金調達が必要となることがあります。
これらは一般的な事業融資の受けるタイミングの例ですが、実際の企業によっては他の要因やタイミングも考慮されることも多くあります。事業の財務状況や成長計画、業界のトレンドなどを総合的に判断し、最適なタイミングで事業融資を受けることが重要です。
創業資金としての融資
創業時に融資を受けるメリットは、ビジネスの立ち上げ直後におけるキャッシュフローの安定性を確保できることです。ビジネスを立ち上げる際には、初期の資金不足に直面する可能性があります。特に、物販業などの場合は、商品を仕入れてから販売し、その代金が入金されるまでのサイクルを経ることが一般的です。
同時に、従業員を雇用する場合には人件費が発生し、その他の経費も賄わなければならないため、現金の流出スピードは非常に速くなります。このため、創業時には適切な運転資金を十分に確保しておく必要があります。商品の仕入れや経費の賄いなど、現金が先行して必要となる創業フェーズにおいて、適切な運転資金を確保することは重要です。運転資金が確保できることにより、順調な事業展開を支え、持続可能な成長につなげることができます。
また、融資に対するネガティブなイメージを持つ人もいますが、創業時に融資を受けることのメリットは他にもあります。現実的には、資金が不足している状況になると、融資を申し込むことは困難です。なぜなら、資金不足は通常業績も悪いことを意味し、その時点での決算書に基づいて融資申し込みを行っても金融機関から回収の可能性に疑問を持たれるからです。
しかし、創業融資の場合は事業がまだ始まっておらず、業績は存在しないため、融資は事業計画の妥当性に基づいて行われます。そのため、創業時に融資を受けることは比較的容易になるというメリットがあります。
創業融資の種類
創業融資の選択肢は多岐にわたりますが、特におすすめできる3種類を紹介します。
政府支援ローン
多くの国では、新規事業者を支援するための政府主導による融資プログラムが用意されています。これらのローンは、比較的低い利率で提供されることが多く、創業者にとって財務的負担が少ないのが特徴です。また、返済条件が柔軟であることが多く、新たなビジネスの立ち上げに集中できる環境を提供します。
ベンチャーキャピタル
ベンチャーキャピタルは、特に高い成長ポテンシャルを持つスタートアップや革新的な事業に投資する資金源です。ベンチャーキャピタルからの資金調達は、大規模な資金が必要な事業や、市場に新しい技術やサービスを導入する場合に特に適しています。資金提供の代わりに企業の一部の株式を提供することが一般的です。
銀行ローン
従来型の銀行ローンは、創業融資の基本的な選択肢の一つです。銀行からの借入は、信用力や担保が重要な要素となりますが、比較的安定した資金調達方法として利用できます。銀行ローンは、資金の使途が比較的自由であり、創業時の資本金や運転資金の調達に適しています。
創業融資の審査のポイント
審査の通りやすくするポイントを以下にまとめました。
融資審査における自己資金の重要性
創業融資を受ける際には、自己資金の額が審査の重要な要素となります。自己資金が多ければ、融資の承認確率が高まります。少ない自己資金でも成功例はありますが、それは例外的なケースです。自己資金が不十分な場合、強力なビジネス経験や明確な売上予測が必要になります。また、融資額の三分の一を自己資金でカバーできることが理想的です。
効果的な事業計画書の作成
創業融資の申請には事業計画書の提出が必要です。この計画書には、創業の動機、経営者の背景、商品やサービス、取引先情報、従業員数、融資状況、資金調達方法、事業予測などを含める必要があります。ただし、これらの情報だけでなく、ビジネスのアピールポイントと数字に裏打ちされた根拠を示すことが重要です。
マイナス要素の排除
融資の承認には、個人の信用情報が大きく影響します。支払い遅延や滞納、税金の不払いなどの記録があると融資が難しくなります。信用情報は過去5年間の記録がチェックされるため、財務管理には注意が必要です。
面談での効果的なプレゼンテーション
審査通過には、融資の面談で必要な情報を的確に伝えることが鍵です。面談は通常30分から1時間程度行われます。面談の際には、適切な服装や態度をもって臨み、緊張し過ぎないことが大切です。審査担当者は基本的に融資を望んでいるので、自信を持ってビジネスプランを伝えましょう。
専門家への依頼
融資の申請には専門家の支援を求めることも一つの方法です。独力での申請成功率は50~60%ですが、専門家のサポートにより成功率を高めることが可能です。審査に落ちると記録が残り、少なくとも半年は同じ事業での融資が難しくなるため、初回から専門家の助けを借りることが有効です。
返済期間について
融資を受ける際に、適切な返済期間と方法を選択することは重要です。一般的に、返済期間は「短期融資」と「長期融資」に大別されます。短期融資は融資実行後1年以内に返済するものであり、長期融資は1年を超える期間で返済するものを指します。創業融資の多くは、通常、長期融資に該当します。
返済方法には、一括返済や分割返済などがあります。融資のタイプや金融機関、利用目的によって最適な返済方法を選ぶ必要があります。
審査プロセスでは、短期融資の方が通過しやすいとされています。その理由は、短期間での返済が計画されているため、融資側が返済計画を理解しやすく、リスクが低減されるからです。また、申込者も返済計画を具体的に立てているため、短期融資を選ぶことが多いです。
短期融資は主に、迅速な資金調達が必要な場合や一時的な資金繰りの改善が目的の場合に利用されます。例えば、季節的な商品仕入や特定プロジェクトの資金調達など、短期間での返済が見込まれる場合に選ばれることが多いです。
拡大・成長のための融資
事業を拡大する際には、融資は資金調達の一つの選択肢となります。融資を受けることで、企業の資金繰りがスムーズになります。ただし、すべての企業が融資を受けられるわけではありませんので、事前にしっかり準備を行って臨みましょう。
まず、事業計画書についてです。事業計画書は、事業内容や市場概況、商品詳細などはもちろんのこと、損益計画やリスクに対する対応策などの数値計画が中心となります。これによって事業の拡大可能性や必要な資金の評価など、現状の分析が明確になります。融資を受けるためには、金融機関がどのような情報を求めているのかを考えて、どのような計画を立てるべきかを検討しましょう。
また、金融機関への相談時には、事業計画書に加えて決算書、試算表、資金繰り表などの資料を準備しておくと円滑な話し合いが可能です。金融機関との会話の中で、追加で提出が必要な資料や具体的な要望が出ることもあります。相談をする前には、自分自身でも情報を調べることも重要です。銀行、信用金庫、日本政策金融公庫など、融資をしてくれる機関は多数存在します。自社の事業規模や内容、希望する融資額に合わせた制度を選ぶことができるため、ある程度の知識を持っておくと便利です。
経営資金の補填
経営資金の補填で、追加融資が必要となる場合は、同一の事業に対して2回目以降の借り入れを行います。複数の事業に対する新たな借り入れは追加融資には該当しません。既に事業を開始して1年以上経過した段階で、再度銀行などの機関に審査を受け、借り入れを行うことになります。この際、実績が主に重視され、融資の可否が判断されます。
また、追加融資は、事業実績が悪い場合では審査に通過しにくい可能性があります。追加融資の審査基準は、創業融資を受けてからの業績改善の有無に大きく依存するため創業時の融資を受けた後に事業実績が改善していない場合、追加融資を受けても業績がさらに悪化し、融資を返済できないと判断される可能性があるので注意が必要です。
1年の中で融資が通り安いタイミング
一般的に審査が通りやすいタイミングは3月、9月、12月と言われています。下記に理由を説明いたします。
3月
金融機関は、半年ごとに各支店の業績を査定します。この査定は、支店の運営方針や業績目標に基づいて行われ、支店長の評価や人事に大きく影響します。特に、3月は多くの金融機関の決算月であり、下半期の査定が行われる重要な時期です。
下半期は10月から始まり、この時期に各支店はその期の運営方針と目標数値を設定します。設定された目標には、融資額も含まれ、これらの数値は厳しく設定されることが一般的です。決算月になると、目標数値に達していない支店は業績を向上させるため、融資に積極的になる傾向があります。
このように、決算月には目標達成のために融資が通りやすくなる可能性が高まります。また、申し込む側にとっても、前期より当期の業績が良い場合、融資の承認が得やすい状況が生まれることがあります。そのため、自社が3月に決算を迎える場合は、前期と当期の決算を比較して、融資申し込みのタイミングを検討するのが良いでしょう。
9月
金融機関の年間運営は、上半期(4月から9月)と下半期(10月から翌年3月)に分かれています。特に、9月は上半期の終わりにあたり、多くの金融機関にとって半期の決算期、つまり「仮決算月」となります。この月は、3月と同様に、半年ごとの査定が行われる重要な時期です。
各支店は、期初の4月に設定された運営方針に基づき、設定された目標数値を達成するために努力します。このため、9月には融資活動が活発になり、融資の審査が比較的通りやすくなる傾向があります。金融機関は、半期の目標を達成するために融資に積極的になる可能性が高まるのです。
この情報は、融資を申し込む際のタイミングを検討する上で重要となります。9月は、金融機関が目標達成のために融資を積極的に行う時期のため、融資申し込みにとっても有利な時期と言えるでしょう。
12月
12月は、年末年始に向けた仕入れや賞与支払いなどのために、融資の需要が高まる時期です。この時期は、一年を通じて資金ニーズが最も高くなるため、融資の申し込みが多くなります。この増加した需要は、金融機関にとって年間の融資目標達成に寄与する重要な機会となります。その結果、金融機関は貸し出しを増やす傾向にあり、融資の審査においてもより柔軟な態度を取ることが一般的です。
また、12月には融資申し込みの件数が非常に多くなるため、金融機関は個々の案件に対して詳細な審査を行う時間が限られてきます。このため、審査が簡易化される12月は融資の審査が通りやすくなると言われています。融資を申し込む際には、この時期の金融機関の状況を考慮に入れると有利になる可能性があります。年末における融資需要の高まりを、資金調達の機会として利用することができるでしょう。
まとめ
このように事業融資を受けるタイミングは、重要な戦略的判断を要します。創業時には運転資金や初期投資のための融資が必要とされます。事業が安定し成長する段階では、拡大資金や設備投資のための融資が検討されます。
そして、不測の事態や一時的な資金不足に備えるための緊急融資も考慮されます。ですから、融資を受ける際には、自社の財務状況や事業計画、市場の動向などを適切に評価し、必要な資金調達を計画的に行うことが重要です。
また、金融機関との円滑な対話や適切な資料の準備も不可欠です。事業の成長や継続に大きく影響を与えますので、慎重な判断と準備を行いながら、最適なタイミングで融資を活用し、事業をの発展させるに貢献することが求められます。
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