融資という言葉をよく耳にします。事業を営む方であれば、一度は融資を考えたことがあるのではないでしょうか。
本記事では、融資の基本的な知識をまとめています。融資に関する知識を得たい方は、是非参考にしてください。
融資とは何か?融資の基本
融資は、金融機関からの借入を指す言葉です。ただ、通常の「借金」とは異なる点があります。
一般的な「借金」は消費目的のために行われ、生活費や住宅、車、洋服などの購入に使われます。
一方、「融資」は事業を継続するための資金を借りることを意味します。事業の収益を生み出すために資金を借りるため、消費目的とは異なるのです。融資は返済義務が発生し、借りた金額には利息の支払いが必要となります。
ですから、融資を受ける際には返済能力を考慮する必要があります。
融資の主な種類
融資には様々な種類があり、その目的や条件に応じて異なる融資オプションを選択することができます。主な融資の種類には以下のようなものがあります。
事業融資(ビジネスローン)
企業が事業の運営資金や設備投資、事業拡大などの目的で利用する融資です。通常、銀行や金融機関から提供されます。
個人融資(パーソナルローン)
個人が個人的な支出のために利用する融資で、通常はクレジットスコアや収入に基づいて提供されます。
住宅ローン(モーゲージ)
不動産の購入やリフォームのために利用される長期融資です。物件自体が担保となります。
自動車ローン
自動車の購入に特化した融資で、車両が担保となることが多いです。
教育ローン
学費や教育関連費用の支払いのために利用される融資です。
クレジットカードローン
クレジットカードの利用枠内で借り入れる形式の融資で、利便性が高いですが、比較的高い金利が適用されることがあります。
小口融資(ペイデイローン)
短期間で少額の資金を借りることができる融資で、高い金利が適用されることが一般的です。
ベンチャーキャピタル
主にスタートアップ企業や成長期の企業が成長資金を得るために利用する融資で、株式投資の形を取ることが多いです。
融資の目的と利用シーン
融資は、利用する目的や借りたお金の用途によって、事業用資金と個人用資金に分類されます。
・事業用資金の融資
企業や個人事業主は、事業の運営や拡大のために融資を受けることが一般的です。この融資は「設備資金」や「運転資金」として利用され、事務所や機械の購入、家賃、水道・光熱費、材料費、人件費など事業運営に必要な費用のために使われます。融資を申し込む際には、資金の具体的な用途を説明し、審査を受ける必要があります。また、融資された資金は申告した用途にのみ使用しなければならず、これを逸脱すると融資の取消処分の対象になることもあります。
・個人用資金の融資
個人向けの融資には、用途が限定された「住宅ローン」や「自動車ローン」のようなローンと、用途に制限がない「カードローン」や「フリーローン」があります。用途が限定されたローンは、低い金利や長期の返済期間などのメリットがあり、特定の目的に適しています。一方で、カードローンやフリーローンは、さまざまな用途に利用でき、急な資金ニーズに対応しやすいです。カードローンは限度額内で何度でも借り入れが可能ですが、フリーローンは契約ごとに1回限りの借り入れとなります。ただし、銀行カードローンを事業資金として使用することはできません。
融資の審査基準
では、この融資はどのような審査基準があるのでしょうか。
銀行が融資を行う際の基本原則は、「貸したお金が返済される可能性」があるかどうかを評価することです。これは、赤字や貸し倒れリスクを避けるために重要です。そうでなければ、銀行の融資はボランティアになってしまうからです。
審査プロセスのステップ
銀行の審査には、主に2つのステップがあります。
1. ステップ1: 格付け
このステップでは、まず決算書の貸借対照表(バランスシート)を基に、会社の財務状況を定量的に評価します。過去2~3年分の決算書のデータが使われ、金融機関のシステムによって自動的に点数が付けられます。債務超過の状況や経営者の個人的な財務問題がある場合、通常は審査を通過するのが難しくなります。
2. 定性情報の評価
定量的な財務分析に加えて、経営者の資質や業界の状況などの定性情報も評価されます。これには、経営者の姿勢、会社の業界内での位置づけ、業界の成長性などが含まれます。経営者の経歴や過去の実績も審査で重要視されます。これらの情報は、面接や借入申込書を通じて収集されます。
3. 格付けの透明性
通常、金融機関はこの格付けの具体的な内容を公開しません。金融機関の内部評価システムは、過去の金融庁の金融検査マニュアルに基づく債務者区分の実務から影響を受けています。これは、銀行がリスクを管理し、融資を決定する上で重要な要素です。
融資の4つの形態
融資にはいくつかの基本的な形態があり、それぞれ異なる特徴と利用目的を持っています。主な4つの融資形態を以下に示します。
短期融資
この形態の融資は、通常、1年以下の期間で返済されるものです。企業が短期的な資金繰りを改善するためや、急な運転資金の需要に応えるために利用されます。例えば、商品仕入や一時的なキャッシュフローの不足を補うために使われることが多いです。
長期融資
長期融資は、一般的に1年以上の返済期間を持ちます。この形態の融資は、大規模な設備投資、事業拡大、不動産購入など長期的な投資計画に対応するために用いられます。長期融資は、企業の成長戦略や資産形成に重要な役割を果たします。
回転信用融資(リボルビングローン)
この融資形態では、借り手は一定の信用枠内で繰り返し資金を借り入れることができます。信用枠の範囲内では、何度でも借入と返済を繰り返すことが可能です。このタイプの融資は柔軟性が高く、企業が不定期な資金ニーズに対応するために利用されます。
シンジケートローン
シンジケートローンは、複数の金融機関が集まって大規模な融資を行う形態です。特に大きなプロジェクトや大規模な事業買収など、単独の金融機関では負担が大きすぎる融資に対して用いられます。この形態の融資は、リスク分散と資金調達の大規模化を可能にします。
これらの融資形態は、借り手の資金需要や事業の性質、返済能力に基づいて選ばれます。それぞれの融資には独自の利点と制約があり、適切な融資選択が企業の財務健全性の維持と成長に重要です。
「融資」と「出資・投資」の違いは?
「融資」と近い言葉に「出資・投資」があります。
出資は投資家やベンチャーキャピタルが個人や法人に資金を提供することであり、融資とは異なり返済義務は発生しません。同様に、「投資」という言葉も関連しています。投資は将来的な利益を見込んで資金を提供することを指し、融資や出資も投資の一形態と見なすことができます。
つまり、出資を受けた場合は返済義務はありませんが、融資を受けた場合は返済義務が生じます。出資は通常、事業を行っている企業を対象とするため、個人が利用することは難しいと考えられます。そのため、個人が資金を必要とする場合は、融資を受ける方が現実的な手段となるでしょう。
融資とローンの違い
融資とローンは、しばしば混同されますが、実際には微妙な違いがあります。それぞれの用語の基本的な意味を説明します。
融資
融資は、一般的に金融機関や他の貸し手が個人や企業に資金を提供する行為を指します。この用語は、より広い範囲の金融取引をカバーし、貸し手と借り手の間の金銭的関係全体を含むことが多いです。融資は、特定の条件や合意の下で資金が提供されるプロセス全体を示すことがあり、ローンの発行を含むこともあります。
ローン
ローンは、借り手と貸し手の間で具体的な金額と条件が決められた、特定の金融取引を指します。ローンは、貸し手から借り手への資金の移動と、その後の返済スケジュールや利息に関する具体的な合意を伴います。ローンは通常、特定の目的や期間、金利、返済計画など、より詳細な条件が定められた契約を伴います。
融資のメリット、デメリット
メリット
経営介入のリスクがない:融資は金融機関から直接借り入れるため、出資と異なり第三者からの経営介入を受ける可能性はありません。多額の資金調達が可能:借り手の信用や担保によっては、多額の資金を借りることができる可能性があります。
デメリット
返済義務の発生:融資を受けると、返済の義務が生じます。利益が生じても、一部は返済に充てる必要があるため、手元に残る金額が減る点がデメリットです。
利息の返済が必要:借りた金額だけでなく、利息も返済しなければなりません。事前に利息を計算し、返済計画を立てることが重要です。
審査が必要:融資を受ける際には審査があります。返済能力や信用情報が確認され、金融機関の基準を満たさない場合は融資を受けることができません。
融資の受け方
・公的融資:日本政策金融公庫
公的融資は、日本政策金融公庫からの借入方法です。日本政策金融公庫は、株式会社日本政策金融公庫法に基づき設立された政府系金融機関であり、民間の金融機関とは異なる役割を果たしています。この公庫は中小企業や小規模事業者を支援するため、銀行などからの融資が受けられなかった場合に事業資金や運転資金の調達をサポートしています。また、一部の事業者以外にも支援が提供されていますが、主に事業者向けの貸付専門金融機関としての役割を担っています。
・公的融資:信用保証協会(信用保証付融資)から借りる
信用保証協会は、中小企業や小規模事業者が金融機関から資金を調達する際に保証人となり、融資を受けやすくする公的機関です。新規に創業した企業や事業者は、事業実績が少なく信用が不足していることが多いですが、信用保証協会による保証を受けることで、融資を容易に受けることができます。もしも借入金を返済できない状況になった場合でも、信用保証協会が保証人として代わりに返済を行ってくれます。ただし、保証を受けるためには信用保証料を支払う必要があります。
・民間融資:ビジネスローンで借りる
ビジネスローンは、事業者に特化したローン商品で、民間の融資機関が提供しています。主に事業資金の調達を目的として利用されます。ビジネスローンの申し込み資格は、法人経営者や個人事業主など事業を営む人が対象となります。
ただし、融資の基準や限度額、金利は提供機関によって異なります。ビジネスローンは、公的融資や銀行からの融資に比べて迅速に融資を受けることができることが多いです。また、通常は担保や保証人を必要としません。ただし、金利は一般的に高めです。
融資を受けるときの注意点
融資の目的を明確にする
なぜ融資が必要なのか、具体的な目的を明確にしましょう。資金が必要な理由と、その資金で達成しようとしている目標を理解することが重要です。
返済能力の評価
融資を受ける前に、自身の返済能力を正確に評価してください。将来の収入と支出を予測し、融資の返済が現実的に可能かどうかを判断することが必要です。
金利と条件の比較
複数の金融機関や融資プログラムを比較検討し、最も有利な条件を選択します。金利、手数料、返済期間、返済方法などの条件を注意深く比較してください。
全体的なコストを理解する
融資の金利以外にも、手数料やその他の費用が発生する可能性があります。全体的なコストを把握し、予想外の費用に備えることが大切です。
融資の条件と規約を理解する
融資契約の全ての条項を注意深く読み、理解することが重要です。特に、遅延時のペナルティや早期返済に関する条件など、細かな部分にも注意を払ってください。
返済計画の策定
実行可能な返済計画を立て、定期的にその計画を見直してください。返済が難しくなった場合には、できるだけ早く金融機関に相談し、解決策を模索することが肝心です。
財務レバレッジの影響を考慮する
融資は企業の財務レバレッジを高めます。これが事業のリスクを増加させる可能性があることを理解しておくことが重要です。
将来のビジネス計画との整合性
融資が長期的なビジネス計画や成長戦略と整合していることを確認してください。
まとめ
融資はさまざまな種類がありますので、その時の状況に応じて適切な選択をしましょう。例えば、緊急性がない場合は公的融資を利用し、低金利の恩恵を受けることができます。
一方、急な資金需要がある場合は即日融資が可能な民間融資を検討することもできます。自身の状況に合わせて適切な融資を利用することが重要です。
また、融資を利用する際には借入額や目的に応じた種類を選ぶことが重要です。返済の義務があるため、自身が無理なく返済できる金額を借りることが大切です。利息も含めて事前に計算し、返済計画を立てることで無理のない融資を利用することができます。
また、金融機関から求められる書類を不備なく提出することも重要です。書類の提出がスムーズに行われることで、融資手続きが円滑に進みます。
このようなポイントに留意することで、融資の利用がより効果的になるでしょう。
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